【適応症】 神経系疾患

顔面神経麻痺

−顔面神経麻痺とは−
末梢性と中枢性に分けられる。前者の病因としては、外傷、新生物や中耳炎、乳様突起炎などに続発するものの他、帯状疱疹や単純ヘルペスなどの直接的感染によるものが知られている。

代表的なものは、原因不明のベル麻痺である。ベル麻痺は、しばしば一側の顔面に、寒冷刺激が加わった後に発症する。このため、顔面神経自体の循環障害が生じたり、顔面神経管内で浮腫が生じたりすることが原因として考えられている。

性差、年齢、季節好発性はない。(南山堂医学大辞典19版より)

現在では、ベル麻痺はヒト単純ヘルペスウィルスの関与によるウイルス再活性化説が最も有力視されています。予後は良好であり、無治療でも71%の症例は治癒するとされています。

また、顔面神経膝神経領域の帯状疱疹で見られる顔面神経麻痺はラムゼイ  ハント症候群といい、ベル麻痺に比べると予後は不良で、自然治癒率は40%とされています。

現代医学での対処法

−麻痺の評価−
日本国内で一般化している評価方法(柳原40満点法に後遺症4段階併記)をご紹介します。
麻痺の程度は10項目(安静時の非対称と9項目顔面運動を採点)について、高度麻痺を0点、ほぼ正常を4点、その間を2点として、合計40点満点で採点します。

後遺症とは、痙攣(眼瞼など)、ワニの涙(食事の時に、患側の目から涙が出る)、アブミ骨筋性耳鳴り(大きな口を開けたり、強くものを噛んだ時、患側の耳で音がする)病的共同運動(目を閉じると患側の口角が挙がる、口角を動かすと患側の目が細くなる)、拘縮(患側の筋が委縮し、安静時の顔が非対称となる、自覚的には目が開けにくい、顔がこわばるなどの訴え)などで、それぞれ「なし・軽い・中程度・重い」の4段階で評価します。



―顔面神経麻痺の予後―
顔面神経麻痺の予後を診断する方法として現在最も普及しているのがENo Gという電気診断法です。
一般には、ENo G値40%以上は予後良好、10%以下では、麻痺の治癒は難しいと言われています。

発症後7〜10日経過してからの評価になるため、初期に予後を予測して治療に反映させるには、前述の40点法スコアが使われます。麻痺は発症から数日でいったん悪化することが多く、この最も悪化した時のスコアが10点以上のベル麻痺は、ほとんど完治するといわれています。

一方、ENo G値が10%以下で、麻痺スコアが8点以下の場合には、完全治癒は困難とされています。

また、麻痺が3か月以内で治癒した場合は、後遺症が出現する率が低いことから、早期に治癒させることが大切であるといわれています。

治療

ベル麻痺
治りにくい高度麻痺例を対象として、有効性が証明されている治療はステロイドのみなので、高度麻痺例では発症から1週間以内に十分なステロイドの投与が必要とされています。

そのほかの治療法として、ビタミン剤、循環改善剤、血管拡張剤の投与や高圧酸素療法、星状神経節遮断、顔面神経減荷手術などがあります。

ハント症候群
ベル麻痺に比べて治癒率が低く、初期に抗ウイルス剤を投与し、ベル麻痺と同様の治療も併用します。

顔面神経麻痺の鍼治療

当院で行う顔面神経麻痺に対して行う鍼治療は、天津中医薬大学第一付属病院で実際に行われている治療法(高頻度疎密低周波鍼通電、置鍼を組み合わせた鍼法)を取り入れ、非常に高い効果をあげております。

一部の医師から、顔面神経麻痺に対する鍼通電は顔面神経核を刺激し、病的共同運動の発現を助長する可能性を指摘されておりますが、埼玉医科大学の山口智先生の研究によれば、神経損傷分類法の1度もしくは2度程度の、いわゆる神経無動作状態か、神経内膜の損傷がない軸索変性の状態であれば、完全回復もしくは回復が期待でき、神経を目標とした鍼通電療法を継続しても、過誤再生による病的共同運動の発現がおこらないことが確認されています。

これに対し、3度の中等度から高度の麻痺では、本来、病的共同運動などの後遺症のリスクは非常に高いとのことです。

しかし、これらの中度から高度の顔面神経麻痺に対して、高頻度刺激による非同期鍼通電療法をおこなうことで、非常に高い治療効果をあげています。

当院では、それぞれの病態に応じて、天津方式と埼玉医大方式を組み合わせた施術で、顔面神経麻痺に対応しております。