【適応症】 運動器系疾患

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎での神経組織には、馬尾(ばび)と、馬尾から枝分れし前側方へ向い下肢へ至る神経根とがあり、それぞれが脊柱(せきちゅう)管と椎間孔に内包されています。椎間板は椎体同士の間にあり、水分を多く含んだゼリー状の髄核とそれを取り囲む丈夫な線維輪とから構成され、いわばクッションの働きをしています。腰椎では上体からの重さに耐えうるべく椎間板の質量、大きさともに頸椎や胸椎に比べて大きい特徴があります。椎間板は20歳を過ぎるころから、しだいに髄核の水分が失われるため不安定性が生じ、線維輪にも亀裂が生じるようになります。このような状況の下で、急激に椎間板内圧が高まると、髄核や線維輪の一部が脊柱管内や椎間孔へ膨隆・脱出し、馬尾や神経根を圧迫します 膨隆・脱出の程度に応じて、ヘルニアの種類は、[1]線維輪内に留まるもの、[2]椎体の後面にある後縦靭帯(こうじゅうじんたい)の直下まで至るもの、[3]後縦靭帯を突き破り一部が脊柱管内に脱出するもの、[4]脊柱管内に脱出した一部が遊離したものなどに分類されます。通常は、30〜40歳代で多く発症し、好発高位は下位腰椎の第4/5腰椎間と第5腰椎/第1仙椎間です。

▼ 症状
腰痛と、下肢の痛みやしびれが主な症状です。神経根への刺激症状が強いと痛みのため、立位にて腰椎の前屈が困難となり、またヘルニアによる神経根への刺激を回避させようと脊柱を側方へ傾ける姿勢(疼痛性側弯 <とうつうせいそくわん> )になります。これらの痛みは、背中をややまるめる姿勢をとると軽快します。同様に、仰臥位(ぎょうがい:仰向け)で膝を伸ばしたまま下肢全体を持ち上げると、臀(でん)部から大腿後方にかけて坐骨(ざこつ)神経痛が生じるため、ある角度以上の挙上が困難となります(下肢伸展挙上 <かししんてんきょじょう> テスト)。
ヘルニアが生じた高位により、下肢にはそれぞれ特徴的な症状が現れます。通常、第4/5腰椎間のヘルニアでは第5腰神経が圧迫されるため、下腿外側から母趾(ぼし)にしびれや痛みを感じ、母趾の背屈(手前側に反らせる動作)ができにくくなります。第5腰椎/第1仙椎間のヘルニアでは第1仙骨神経が圧迫されるため、足背外側と足底にしびれや痛みを感じ、足関節の底屈(つま先立ち)ができにくくなります。一方、脊柱管の中心にある馬尾が強く圧迫された場合には、肛門周囲のしびれや痛みや、時には排尿困難、便秘を生じます。

腰椎椎間板ヘルニアの治療法

まず、陰部の痺れや異常感覚、持続性陰茎勃起を含む膀胱直腸障害のあるものは、「中心型・ 馬尾型」と考えられ、手術が適応となるため当院での治療対象とはなりません。
神経根型に対しては鍼灸治療、整体治療により著効をあげております。

「痛みや痺れは、神経の圧迫によりものだけではなく、筋肉繊維の硬直によるものも原因となりうる」という考え方(トリガーポイント理論といいます)から、まずは症状と関係の深い筋肉を徹底的にほぐします。
腰部では、腰椎の関節部分や椎間孔付近に付着している多裂筋や回旋筋などをほぐし、腰椎の可動性を高めます。さらに腰椎椎間関節にけん引・ストレッチを施して、椎間孔部分を拡大していきます。この時点で下肢の症状が楽になる方もいらっしゃいます。
また、臀部から下肢の痺れや重だるさでは、腸腰筋、梨状筋や小臀筋などを治療することにより軽減することも多いです。
さらに陰部神経の低周波鍼療法により、坐骨神経の血流が大幅に改善されると、下肢のつらい痺れや痛みも改善されます。
そしてヘルニア局所に鍼治療をして、循環を高めることで、突出した髄核の吸収を促します。
また、激しい坐骨神経痛で、横になるのもつらいという方には、跗陽穴(ふよう)に多壮灸を行い、さらに中極穴を治療すると、横になることができますので、そこから通常の坐骨神経痛に対する治療をおこないます。

このように総合的な治療を施すことで、より早くヘルニアを完治に導くことができるのです。